軽量化の弊害?ハードスーツケースのポリカーボネート100%ボディが薄いペコペコなのですが
「頑丈だというレビューを見てハードケースを購入したのに、届いたものはペコペコで安っぽく残念です。2万円弱する商品なのにこんな安物と同じようなものなのでしょうか。」
本日はこのようなご意見を頂きました。1万円代後半の商品をお買い上げ頂いたお客様からのご意見です。
2万円近い、激安品と比べると高価な商品を購入したにも関わらずボディがペコペコして安物のように感じるとのことでした。こういったご意見は時々いただき、当店や他店の商品レビューを見ても度々散見されるご意見です。
何をもってペコペコかということでユーザーの主観によるところが大きいのですが、今回ご意見を頂いたお客様にご購入頂いたモデルは、最近のフレームハードケースとしては割りと硬い方のモデルになります。
色々なキャリーバッグを見ている店長の私はペコペコなモデルだとは全く思わないのですが、それでもボディを手で押すとたわむのは間違いありません。本日は現代のポリカ100パーセントのハードケースのボディについて解説させていただきます。
今時のポリカーボネート100%のハードケースはペコペコが当たり前
元々ハードタイプのスーツケースのボディには耐衝撃性にすぐれた樹脂のABSが使われるケースが大半でした。2000年にリモワがABSよりも更に耐衝撃性に優れたポリカーボネートを使ってスーツケースを作ってから、ポリカ素材のモデルが増えてきました。
最初はABSと組み合わせた複合板のボディが主流でしたが、2005年頃から国内メーカーからもポリカーボネート100%のモデルが続々発売され、2010年頃になると逆にポリカーボネート100%が主流になってきました。今日ではABSのスーツケースを見つけるほうが困難です。
ポリカーボネートは最も耐衝撃性に優れた透明の樹脂で、航空機の窓ガラスや機動隊の盾などに使われています。頑丈なABSよりもさらに数段耐衝撃性に優れるため、ABSのボディよりも薄くすることが出来ます。
ABS素材の時代は2ミリ、ひどくゴツいモデルは3ミリ以上あったボディの厚みは、ポリカーボネート素材時代になって1ミリ、場合によってはそれ以下になりました。これだけ薄いと、樹脂である以上は押せばペコペコしてしまいます。
ここまで薄くするのは、ポリカーボネートが強度に優れることに加えて、非常に高価なため原材料費を抑える目的もあるようです。薄さを半分にすれば原材料となるポリカのペレットも半分で済みます。小売価格からすれば原材料コストなどわずかな差ですが、工場にとっては死活問題です。
このようにポリカーボネート100%時代になってボディが大幅に薄くなっているので、昔の旅行鞄よりもボディがペコペコなのは仕方がないことなのです。
高価なモデルを購入してもペコペコするのは同じです。むしろ高価なモデルほど軽量性を追求しているのでペコペコな傾向にあります。
ペコペコを好まない方は、なるべく重量の重いモデルを選ぶことをお勧めいたします。重量が重くて良いことなど1つもございませんが、重ければ重いほどボディは厚くなる傾向にあります。
薄そうに見えても頑丈なボディなのです
それでは、このポリカーボネート100%の薄いペコペコのボディの強度はいかがなものなのでしょうか。
結論から申し上げると必要十分な強度を持っているので安心して使えるものの、やはり昔のABSの分厚いボディよりは割れやすいということになります。
スーツケースの破損は運によるところが大きいので難しいところではございますが、今のペコペコのスーツケースでも一流メーカー製なら平均して20~30回の渡航に耐えます。
(フライトにして50~100フライト程度です。あくまで平均ですので運が悪いと1フライトで破損することもあれば、100フライト以上保つこともございます。)
これだけの最低限の実用強度があれば、少しでも薄くして軽くするほうがユーザーにウケが良いだろうというのがメーカー側の判断なのでしょう。実際、10年間で20回も海外旅行に行くほうが珍しいのは事実です。
昔のABSの分厚い重いモデルは、平均して30~40回の渡航に耐えましたので、少し強度的には下がっているのは事実でしょう。何よりもABSと比べてバリッと割れるケースが多いように感じます。
普通のペースで海外に渡航する方にとって平均で20回保っても、40回保ってもあまり変わりません。樹脂の劣化で寿命を迎えるまでに使い切るほうが少ないのではないでしょうか。
10年程度で樹脂が劣化して寿命を迎えるといいますが(実際は10年程度では全く大丈夫ですが)、10年で20回も海外旅行に行く人はなかなかいらっしゃいません。
1年に1回海外旅行に行くようなペースの方でしたら、ペコペコのポリカーボネートボディでも十分に長持ちします。(運悪く投げつけられなければですが)
ただし、メーカー品ではない激安のノンブランド品やショップブランド品ですと、樹脂自体の品質が低く2,3回の使用で当たり前のように割れてしまうケースが御座います。タグの表記は同じポリカ100%でも雲泥の違いがあります。
欧米や日本の大手メーカー製ですと、ドイツの化学メーカーのバイエルのマクロロンや、日本の化学メーカーの帝人化成のパンライトなどの一流素材が使われていますが、安物は中国の化学メーカーのポリカーボネートが採用されていて、強度が全く違うので注意が必要です。