スーツケースを高温多湿な場所や極めて寒冷な場所に保管しても大丈夫?
「スーツケースは、真夏の車中等の高温の場所に保管するのは良くないでしょうか?」
本日も頂いたご質問にお応えいたします。スーツケースを高温の場所で保管してもよいのかというご質問になります。
結論から申し上げますと、高温の場所で保管しても問題はございませんが、できれば避ける事が無難ということになります。
当店の倉庫は、高額な製品や精密機器なども扱う大手物流センターのような空調完備の立派な倉庫ではなく、空調のない平屋建ての倉庫です。
住居用建物のように断熱材もなく、夏場には外より中のほうが熱いくらいで、スタッフはスポットエアコンで暑さをしのぎながら倉庫作業を行っております。
40度は確実に上回っており、下手をしたら炎天下の車の中と同じくらいの温度にまでなっている時間帯もある可能性がございます。
しかし、このような倉庫で保管していても、スーツケースの品質には全く問題がございません。
同じ倉庫でレンタル用のスーツケースも保管しておりますが、性能に問題が出ること無く平均で20~30回、期間にして1,2年は全く問題なく貸し出せております。
10年以上前の古いスーツケースもサンプルとして幾つか保管してありますが、熱い倉庫内に10年以上保管されておりますが、全く問題ない様子です。
スーツケースの実用的な耐熱温度
スーツケースのボディは樹脂で出来ており、当然耐用温度というものがあります。
スーツケースのボディに使われるポリカーボネートやABSは、熱可塑性樹脂であり高い温度になると柔らかくなり、更に温度が上がると溶けてしまいます。
熱を加えると柔らかくなるからこそ、真空形成によりボディの形に形成することができるわけであり、ぶつけられて陥没した場合などにも熱を加えて修理することができるわけです。
ポリカーボネートの常用耐熱温度は120~130度、ABSは70~100度とされております。
実際に陥没したスーツケースの修理を行う際は、ヒートガンで300度以上の熱風を当てて軟らかくしてから再成形します。
炎天下の車内の50度、60度程度で樹脂が柔らかくなる恐れは極めて低いものと思われます。
しかし、内装などには他の種類の樹脂も使われております。また内装生地など接着剤で貼り付けられている部分もございますので、なるべく涼しい場所で保管することが望ましいのは当然です。
寒冷な場所での保管
今回のご質問にはありませんでしたが、逆に寒冷な場所ではどれくらい耐えられるのでしょうか。
航空機が高度一万メートルに達した時、外の温度はマイナス50度にも達します。
しかし、今の飛行機は客室だけではなく貨物室にも空調が付いているため、貨物室内がここまで寒くなることはありません。
当然、客室の様に20度強の快適な温度まで上げられていることはありませんが、それでもマイナスになることは稀なようです。たとえ空調を切った運用でもマイナス10~20度位が下限のようです。
航空機の貨物室の過酷な環境に耐えられるから、スーツケースがマイナス50度の中でも平気だと考えるのは、完全に誤りであることが分かります。
ポリカーボネートやABSの実用耐冷温度はマイナス30度程度であるそうです。
これだけ寒い地域にお住まいの方もなかなかいらっしゃらないとは思いますが、あまりにも寒い場所で保管することも避けたいものです。
真冬に0度の物置の中に保管する程度でしたら全く問題無いでしょう。
樹脂製のキャリーケースの保管場所の温度は
さて、日本にしろ世界にしろ、-30度~70度までの範囲に収まっていない地域の方が珍しい為、スーツケースの保管場所の温度には神経質になる必要は無さそうです。
ただし、あまりに暑すぎたり寒すぎたりする環境は、やはりスーツケースにとっても過酷であることは間違いございませんので、なるべく人間が快適に過ごせる温度で保管してあげることが重要です。
わざわざ家の中で大きな保管スペースを取って保管するまでは必要ございませんが、できれば0度~40度程度で、極端に過酷な環境を避けてあげたほうがスーツケースも喜ぶと思います。